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評価:
森 博嗣
講談社
¥ 1,890
(2008-08-29)
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今まで読んだ森博嗣の作品の中で一番「小説らしい小説」だと思った。
自選短編集と言うけれど、
テーマだったり雰囲気を絞った中での選出なのかな?
森博嗣は文体を書き分ける力がすごいと思う。
全部の作品の中からこれがいい!ってやつを抜き出したら
こんなに文体がそろわないと思うんだけどなぁ。ま、いいんだけど。
雰囲気的にはとても堅い。
隠喩的、抽象的な内容。
結末の読み方は人それぞれだと思う。
ある一定の時期にあった少しだけ印象に残った出来事を
オチもなくあるがまま書き写したそんな印象のものが多かった。
私はけっこうこういう小説らしい小説って好きなので、
おもしろく読めた。
ただ、すいすいとは行かない。
一番気に入ったというか、気になったのは、「檻とプリズム」
ザ・抽象的。
メタファーだらけな上に、最後まで展開しないので正直よくわからないけれど、
なんだか好き。
気づいたら檻の中にいる僕。
いるかどうか不確かな「彼」の存在。
檻の中にいるのに気づいていない彼女。
檻から一歩も出られないのに、きちんと学校に行く。
一体化している檻から出れば、命を失う。
そうして得るプリズムを美しく思う。
表題作の「僕は秋子に借りがある」はあまりぴんと来なかった。
秋子のキャラクターはすごく魅力的だったけど。