|
評価:
津村 記久子
講談社
¥ 1,365
(2009-02-05)
|
すごく好き。
この淡々としながらも、精密な描写。
日常のある部分を切り取って彼女らの人生を描きあげる様。
心の揺らぎ、感情、現実。
ただ、表題作の「ポトスライムの舟」よりももう一つの「十二月の窓辺」
が強烈過ぎた。
「ポトスライムの舟」の方は読み返してもあらすじを思い出せなかった。
両方とも好き。なんだけど。
「ポトスライムの舟」
ナガセは工場のラインで働いている。
それ以外にも、友人のヨシカが経営しているカフェでアルバイトをしたり、
内職をしたり、パソコン教室で簡単な操作を教えたりと
とにかくよく働く。
なんとなく不安定な感じのするナガセ。
工場に貼ってあった、「地球一周クルージングの旅、一六三万円」というポスターに強く惹かれる。
それが工場での一年間の年収とほぼ同額ということに気づき、なおさら夢想する。
なるべく節約をして、その額をためることを決心する。
共通の友人であるヨシカ、そよ乃、りつ子。
彼女らもまた、生き方は様々。
「十二月の窓辺」
ツガワは職場で一人だった。
お局様的な上司、V係長からの負の感情を一身に受けていた。
周りのものもV係長に同調するばかりで誰もツガワの味方にはならない。
V係長のいい様は辛辣で、相手のやる気を根本から奪ってしまうよう。
ツガワはいつも冷や汗をかきながら、泣きそうになりながら耐えていた。
同じビルに入っている別の会社のナガトとは時々一緒にお昼を食べる仲。
あまり語らないナガトだが、上司のことをよく思っていないことをツガワに少しだけ打ち明ける。
ツガワが働く会社からは「トガノタワー」という大きなとがったビルが見える。
そこにはかつて彼女が応募した会社も入っている。
ある日、女性社員が男性社員から暴力を受けている所を見てしまう。
あらすじとしてうまくまとめられないや。
でも、「十二月の窓辺」の方はとにかく痛かった。
完全に外の世界からツガワの世界を覗き込んでいるような感じ。
彼女の閉塞感は作られたものだよ、そこから逃げ出せば未来は明るいよと言ってあげたくなる。
なんとなく、かつての自分にだぶる。