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評価:
有川 浩
新潮社
¥ 1,260
(2006-09-28)
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伸とひとみにとってともに忘れられない本、「フェアリーゲーム」
中学生の頃読んだ、ライトノベルシリーズ。
そのラストは彼らにとって衝撃的だった。
社会人になった伸はふとした興味でネットでそのノベルを検索してみる。
そして、ひとみによる感想が書かれているサイトにたどり着く。
彼女の意見に惹かれた伸はひとみにメールを送り、やり取りが始まる。
ネット上で仲良くなれば実際に会ってみたいと思うのは、当然。
だけど、ひとみにとってそれは恐ろしいことだった。
伸にはやり取りの仲で明かしていなかった秘密、聴覚障害。
一度目のデートはギクシャクした状態で終わる。
伸は何も知らされず、ひとみは隠した。
最後の最後でばれてしまったが、お互い傷ついて終わる。
だけど、そこで伸は諦めなかった。
今まで同じようなことで何度も傷ついてきたひとみは
頑なで、いろいろなことに臆病になっていた。
伸は何度も何度もメールを送り、徐々に彼女の心を開いていく。
男の子がかっこよすぎる。
こんなのいないだろ!と思うんだけど、こういう子、実際いるよな。とも思う。
ここまで綺麗ではないけど、こういう性質の一所懸命で優しい男の子。
聴覚障害のことは私は全くの無知だったと気づかされた。
当たり前と思われていることが当たり前にはできないこと、
途中から音を失った人と、生まれながらに聞こえない人。
伸と同じことを思うけど、やっぱり知らなければ配慮もできないと感じた。
だけど、嫌な思いをしてきたからこそ隠そうとする気持ちもすごくよくわかる。
開け広げるのは、怖い。
だけど、怖がっているより思い切ってオープンにしてしまった方が意外と楽だったりする。
聴覚障害に限らず。
ストーリーは王道感動系。
でもそれだけじゃなくて、感情の読み解き方とか、
情景の描き方がすごくうまいと感じた。
元気が出る本。