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評価:
本岡 類
新潮社
¥ 1,785
(2007-08)
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エルガーの「愛の挨拶」
仁科はヴァイオリンを弾く妻布由子に誘われてピアノを始めることになった。
最初に合奏する曲は「愛の挨拶」だと決めていた。
そんな布由子はかつて留学したオランダに旅行に行き、
そこで突然脳溢血で亡くなった。
仁科は戸惑い、悲しみ、怒りを覚える。
布由子が亡くなったその部屋にはベルナルトがいた。
布由子が留学時に世話になった家の長男で、プロのピアニスト。
仁科が通う大人のためのピアノ教室は、美佐という教師がいて、
同じ教室で植草、立花、由貴と共に仁科はピアノを習っていた。
美佐が偶然出会ったビルマの少女を生活のため忙しい母親、
入管につかまったままの父親の代わりにピアノ教室の時間だけそこに置いておくことになった。
ミャンマーと名を変えても事実上は独裁国家で、
現地に住んでいる人々は未だに「ビルマ」と自国のことを呼んでいるらしいこと。
日本は難民認定が非常に厳しく、裁判ではほぼ負けてしまうこと。
市民の希望の星、アウンサンスーチー女史がニュースでもあるとおり軟禁状態にあること。
少女はハナというあだ名を付けられ、みんなと同じようにピアノを習い始めるが
その才能は美佐先生が驚くほどでめきめき上達していく。
彼女を救うため、ピアノ教室の面々はビルマの裁判を傍聴しに行ったり、
それぞれ調べてみたりと動く。
私も何も知らなかった。
ビルマがそういう情勢であることや日本にもビルマのコミュニティのようなものがあること
日本人ならどんな才能を持っていたとしてもそれを開花できる。
でも、そうでない国に生まれたなら生きていくので精一杯で終わってしまう。
キレイにまとまっていて読みやすいストーリーだった。
だけど、二つの物語は並行するには重過ぎるかも。
なんとなくもやもやもやした気分のまま読了。
面白かったけどね。