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評価:
誉田 哲也
中央公論新社
¥ 1,680
(2007-11)
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北朝鮮に利用され続ける在日朝鮮人。
さらにそのパイプを使ってとんでもないものを日本に入れようと画策する革命家。
在日朝鮮人を隠密のように監視する警察庁公安部
公安部って名前だけはよく聞くのだけど、
実際にどういう仕事をしているのかまったく知らなかった。
過激な右翼、左翼の団体、宗教団体などの摘発をメインにしているのかと思ったら、
国家の保全を目的とし、普通の警察官とはまったく異なる仕事をしている。
具体的な内容は、調査、監視、しかも軽犯罪もいとわないような荒っぽいやり方。
疑惑の送金があった東侑エンタープライズを見張っていた前田班。
先代の社長は自殺でなくなり、
長男の吉男が後を継いだ。
吉男の弟である英男をスパイとして取り込み、情報を流させていた。
しかし、吉男が前田班の知らないところで殺されてしまう。
新宿歌舞伎町で亡くなった呉吉男の刑事捜査に東弘樹は配属された。
周りからも恐れられるほどの有能さを持った堅物。しかも大の公安嫌い。
英男に対しての事情聴取から、何かを嗅ぎ取った。
あるものを探して東京税関にCIAが張り付く。
東侑エンタープライズが受け取った「アイアン」
北朝鮮にいる家族を人質にされた在日朝鮮人は日本人よりも北朝鮮を憎んでいる。
その感情と彼らの環境を利用してたくらまれた大きな犯罪。
のうのうと日本で暮らしている日本人の私には実感し得ない世界。
でも、独裁者が富を牛耳り、国民はただの奴隷のような扱いをする国、
自分の立場を守るためだけに核を持つ国はやはり許せない。
小さな犯罪か、大きな犯罪か。
問われれば大きな犯罪のほうが問題なのはわかる。
それでも問題が大きすぎるために犯す犯罪がそんなに小さくないように感じてしまう。
最後はあまり納得できない結末だった。
内容は面白い。
公安部の意外に普通な人々のやりとりはほほえましいし、
東と公安部の川尻が共闘する場面はよかった。
ただ、物語としてよりも知識を吸収できたという意味で面白かった